げ〜むれびゅ〜

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シナリオ解釈  ver1.00


メモリーズオフ
KID







 今更過ぎる話ですが、メモリーズオフのシナリオ解釈を突然書きたくなったので書いてみようかと思います。


 メモリーズオフの主題は「記憶の克服」です。いきなりですが、これが納得できない方はこれ以降を読んでもあまり意味がないと思われますのでウインドウを閉じてしまうといいでしょう。

 で、この記憶というのは、智也の彩花に関する記憶の事であり、今現在の智也の煮え切らない日々の生活の事でもあるわけです。各シナリオでは、この過程が様々な展開で表現されていく事になります。

 智也は、幼馴染であり、恋人でもあった彩花の死によって心に大きな傷を受けています。しかも、智也は自分のせいで彩花は死んだのだと思っています。

 この彩花に関する記憶を克服する。それが、「メモリーズオフ」であると言えるわけです。

 では、メモオフではその主題に対して、各シナリオでどのようなアプローチをしているのか。それを簡単に挙げていこうかと思います。

(本当はもっとちゃんと章立てして体裁を整えようとしたんですが面倒なんでやめました。ていうか、今更見る人いるのか、これ)


1.今坂唯笑(GoodEnd)

 まずは、唯笑のグッドエンドから。

 まず、唯笑は智也と彩花の共通の幼馴染であり、ある意味では彩花と対等な位置にいるキャラクターです。

 智也にとっては、彩花に関する記憶を共有する人物であり、彩花の死で沈んでいたのを慰めてくれた恩人のようなものでもあるわけです。その唯笑に対して、幼馴染として、彩花との共通の思い出を持つ者として、自分を支えてくれたものとして、恋をする。

 それは彩花の死で立ち止まっていた智也にしてみれば、大きな前進であり、つまりは「記憶の克服」なのです。


2.伊吹みなも

 ゲーム開始時は分かっていませんが、彼女は彩花の従姉妹です。そして、死に至るかもしれない病にかかっている。つまり、「彩花の再臨」です。

 彼女のシナリオに入ってから、智也はみなもとふれあう内に彼女の事を好きになるわけですが、みなもの死を匂わせる要素がいくつも出てきます。そして、その真相を知った智也は何を思うのか。彩花の時にできなかった事を今度はやり遂げる事が出来るのか。その過程が「記憶の克服」であると言えます。

 本来であれば、みなもが死んだあとに、悲しんでいようとも、前向きに生きていこうとしている智也がエンディングで描かれるか、「記憶の克服」ができたご褒美として、元気になったみなもと過ごすエピローグが描かれれば完璧なのですが、結末は匂わせているだけですね。ユーザーに解釈を任せたかったのか、それとも結論を出す事を避けたのかは分かりませんが。


3.双海詩音

 詩音自体は彩花と関係はありません。ただ、彼女と一緒にいる事で、智也が「彩花を思い出す」ことに意味があります。

 ゲーム中では同じシャンプーを使っている、と言う理由などから、彼女の髪の香りから彩花の記憶が蘇っていますし、寝ぼけているときなどに何度か詩音と彩花を間違えています。これは、「詩音が彩花と似ている」という意味であり、智也にとっては、彩花に似ている人を好きになってしまった、という事実に繋がります。

 似ていると言っても、詩音は彩花とは違います。詩音もシナリオの中で言っています。「私は、私です」と。智也はその事実を認識した上で、詩音に向き合えるのかどうかというのが問題になります。それが大丈夫なようであるなら、「記憶の克服」は達成されたと言っていいのです。


4.音羽かおる

 彼女のシナリオは少しだけ特殊です。かおるが転校してきて、性格が合ったのか智也とかおるは急速に親しくなっていくわけですが、かおるには元々は彼氏がいたわけです。ただ、自然消滅に近い形で別れているようで、彼女はその事を深く後悔しています。

 さて、ここで考えなければならないのは、彼女の境遇です。「恋人へ何も言えずに別れてしまい、その事に後悔している」。これ、誰かに似ていませんか?

 そう、智也です。つまり、このシナリオにおいては、記憶を克服するのは直接的にはヒロインのほうなんです。シナリオとしては彩花に関することは前面に出てきません。シナリオの最後ではかおるが元カレに会って思い出にケリをつけます。「記憶を克服」は成されたわけです。

 もちろん、似た境遇である彼女を客観視し、その後押しをした智也も、間接的には記憶の克服をしている事になります(かおるの後押しをするとき、正確なセリフは覚えてませんが、智也は「俺と違って、かおるはまだ会うことが出来るんだから」的なセリフを言う事ができています。これは大きな根拠となります)。


5.霧島小夜美

 小夜美に関して言えば、彩花は何の関係もありません。これは「何も関係がない」ことに意味があるのです。

 つまり、小夜美シナリオは「彩花に縛られず、智也が自分で歩き出すことが出来た」シナリオであると言えるわけです。彩花とは何の関係もない、新しい出会いです。

 シナリオ終盤、智也が小夜美をデートに誘うシーン。智也は勇気が出ないのか、玄関のところで迷ってばかりいます。そこで鼻をくすぐる柑橘系の匂いと、「がんばれ」というセリフ。それは智也が新しい道を歩き始めた合図であり、もしかしたら天国にいる彩花の、しょうがない幼馴染に対する激励だったのかもしれません。

 ともあれ、小夜美をデートに誘った時点で、「記憶の克服」という観点で見れば目的は達成されており、じつはこのあとのデートシーンは、エピローグでも良かったんですよね。しかし、実際にはもう少しイベントが付加されていて、その構成としての不自然さが、小夜美シナリオの不人気の原因なのでしょう。


6.今坂唯笑(TrueEnd)

 さぁ、ここでTrueとGoodを分ける必要があるのか、と疑問に思われる人がいるかもしれません。

 もちろんこれには意味があるんです。まず知ってもらいたいのは、TrueとGoodの分岐条件です。Goodはもちろん唯笑に対して優しい態度を取っていけばエンディングを見る事が出来るわけですが、Trueは違います。何が違うのか。

 それは「誰にも関わろうとしない」選択肢を選ばなくてはならない事です。

 これまで説明してきたシナリオでは、様々な展開から智也の成長の様子が描かれていたわけですが、このEndに関してだけは、違います。誰にも関わろうとしないと言う事は、立ち止まったままと言う事であり、「記憶を克服」出来ていないのです。ではこのシナリオの意味はなんなのか。

 キーとなるのは唯笑の存在です。唯笑シナリオなんだから当然と言えば当然なのですが、彼女は智也と彩花と、三人の幼馴染です。つまり、智也だけではなく、唯笑も彩花の死に、傷を受けているはずなのです。当時の落ち込み振りが見ていられなかったのか、智也を慰めていたりしたわけですが、唯笑も悲しくなかったはずがありません。

 このシナリオでは「記憶の克服」はできていない、と書きました。そして、2人の「共通した心の傷」を持った人物がいます。これで、このシナリオの意味が見えてきます。つまり、このシナリオでは「これから2人で過去を克服」していくのです。シナリオの最後で克服していると言ってもいいのかもしれませんが、智也は唯笑の気持ちに気付いただけで、おそらくまだ克服したとは言えないと思うのです。

 ここは私の解釈になってしまいますが、このTrueEndシナリオは「これから二人三脚で彩花の記憶を思い出に変えていこう」という意味である、と考えるのが綺麗ではないでしょうか。


 つまり、メモリーズオフは最初に書いたように、智也が彩花に関する記憶を克服する過程を、様々な見せ方で各シナリオにて展開するゲームなのです。




 さて、ここまで書いてきましたが、おそらく解釈としては間違ってないでしょう。主人公の無茶な行動などで話題になった作品ではありましたが、その本質部分では、このようにかなり綺麗な構成になっていたわけですから、今でもシリーズ中これが一番好きだという人がいるのだと思います。

 ……個人的なことを言えば、1st好きの私からすると、やっぱりメモオフシリーズは打越氏(今は名前違いますが)が企画原案じゃないとダメだよなぁ、などと。







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