『幻想入り(予定)シナリオテキスト』


 第1話







 諸注意:

 これは東方Project(上海アリス幻樂団)を原作とした、『幻想入り』シリーズに属するテキストです。

 キャラクターの性格、口調改変、独自設定、独自解釈などが含まれます。

 それでも構わないと覚悟した方のみ続きをご覧ください。









 物語の始まりというのは、唐突なものが多いと言える。
 当然だ。事件や出来事、非日常的な現象が起こったからこそ物語となるのだから。もちろん、最初のインパクトというのは無視できるものではなく、その最初の1シーンに心血を注ぎ込む作家も多いのだろう。
 吾輩は猫である。国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。サンタクロースをいつまで信じてきた云々。物語はいつだって唐突だ。そんな文を見たのはいったいなんだったか。
 ともあれ、物事の始まりというのは何の予兆もなしに突然始まってもおかしくない、ということだ。
 まぁ、あれだ。ようするに。


 気が付いたら俺は空にいた。


 いや、言いたい事は分かる。というか俺の言ってる事の方が意味不明なのは明らかだ。しかし、事実俺は空にいた。
 …………というか、正確には「落ちていた」
 先ほどまで、近くのコンビニまで夕飯を買いに行っていたのは覚えているのだが、何でこんな事になっているのだろう。
 落下しているとき特有の風を切る音が耳に響いている。はっきり言って状況はよく理解できないが、この現実をどうにかしなくてはならない。何とか状況を把握しようと落下方向に目を向けると、湖が広がっている。
 これは混乱している場合ではない。下が固い地面であれば、この落下運動が終わった瞬間にあの世に一直線だったろが、下が水ならばまだ多少は救いがある。だが、いくら水だとは言え、腹から着水したらそれこそ衝撃だけで死にそうだ。
 目が痛いほどの空気の抵抗を肌で感じる。パラシュートの代わりになるような落下の速度を和らげるものなんて都合よく持っているわけがない。コンビニに行くだけだったのにそんなのを持っているやつがいたら見てみたい。
 ……どうする? 俺は必至に思考をめぐらせる。飛び込みの競技のように、着水するときの面積を小さくするように頭から入ればいいのだろうか。とっさにそんな事を考えるが、しかしこの湖の深さが分からない。もしも浅いようだったら底に頭をぶつけてやっぱり即死は必至だろう。――と、言う事は足から落ちればいいのか。
 そんな事を考えているうちに水面が近づいてくる。
 ……って、まずいまずいまずい!!
 俺は慌てて何とか体勢を整えるように手足をバタバタと動かし、何とか足を下に向ける事に成功した。あとは落下するだけ、だが……

 怖ええええぇぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!!

 思わず心の中で叫び声を上げる俺。
 当たり前である。今までこんな経験なんてしてきたことがないのだ。平々凡々とした生活を志している俺は、危険な行為にはできる限り近寄らない。バンジージャンプだってやったことがない。
 しかし、もうできる事なんて何もない。覚悟を決める。なるようになる!
 というわけで俺は目を瞑って着水するまで神に祈る事にした。
 10秒か、20秒か、体感時間ではそんなとんでもなく長い時間が経ったあと、俺の身体に衝撃が走った。

 落ちたな、と思った瞬間、俺の意識は闇へと沈んでいった……



 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



 ふと、眩さを感じた気がした。まず、目に入ったのは天井だ。
 特に何の変哲もない紅い天井。しばらくそれを眺め続ける。……紅?
 そんな疑問が頭をかすめ、ここでようやくあたりを確認する。俺はベッドに寝かされているようだ。ベッドの横の窓から、太陽の光が差し込んでいる。その色は綺麗な紅。そろそろ日が暮れるようだ。さっき眩しく感じたのはこれのせいだろうか。
 ……えーっと。
 まだ頭が覚醒していない。まずは状況把握をしなければ。俺はいったいどうなったのか。
 妙に重さを感じる毛布を押しのけ、ゆっくりと身体を起す。見ると、4枚くらい毛布が重ねてあった。そりゃ重いわけだ。
 特に違和感のようなものはない。怪我をしている、というわけではなさそうだ。なんだかよく分からないが、あの生死をかけたダイブは何とか成功したのだろう。
 ……と、ここで気が付いたのだが、服を着ていない。もちろん気を失う前はちゃんと着ていた。最近気温が下がってきたので結構厚着をしていたはずだ。だが今はその服が消えている。下着、は履いたままのようだが、上半身は素っ裸。ていうか寒い。
 ――あぁ、何枚も毛布を重ねていた理由は、俺が服を着ていなかったからか。一つ謎が解けた。気温はかなり低く、正直こうでもしてなかったら、普通に体温下がりすぎて命の危機だ。
 で、ここで問題となるのは1点。俺は自分で服を脱いだ覚えはないということだ。
 おそらく、誰かが湖に落ちた俺を見つけて、部屋に運んだは良いが、ずぶ濡れのままではまずいという事でこうなったのだろう。そこの所はありがたい。
 まぁ、とにかく、助かったのだけは確かなようだ。いやはや、よかったよかった。本当にあの時はどうなる事かと思った。
 そんな風に、俺が生の喜びをかみ締めていると、
「あら、ようやく起きたのね」

 !!!!!

 ++++++++++++++++++++

 
 一瞬で意識が覚醒した。
 声の方へ振り向くと、一人の少女が立っていた。
 一番最初に目に留まったのは軽くウェーブのかかった金髪と、鈍く光る黄金色の瞳だ。特にその瞳に視線が惹きつけられた。今まで見たことがなかった色彩だという事もあるにはあるが、それよりも、ただこちらを見ているその瞳に自然と視線が流れてしまう。
 その少女の格好は、頭に薄い紅色のヘアバンド、肩にはこちらも薄紅色のリボンをアクセントとした真っ白なケープを羽織り、身体は空色のワンピース、ヘアバンドと同色のベルトのようなものを腰のところに巻いている。その服装には、いたるところにヒラヒラとしたフリルが付いている。いわゆる『ロリータファッション』というやつに近い気がする。
 印象としては、『人形のような』という表現がピッタリとくる。ただ、小さい女の子、という感じでもないので、可愛らしいと言うよりも、精巧な人形、といった感じだろうか。
 まぁ、こちらを見ている彼女からは、こちらを害する凶器を持っているような様子はないし、俺に対する害意も見て取れない。
 彼女が俺を助けてくれたのだろうか? 状況的にはそれであっている気がするし。
 ……そんなに警戒する必要はない、か。俺は目の前の少女を見て、そう判断を下した。
 まぁ、今の雰囲気が演技で、こちらをどうにかしようと思っている可能性もあるのだが、彼女の目を見ていて思ったのだ。彼女は信用してもよい人物なのだ、と。
 俺はこういう直感のようなものを信じる性質だ。人を見る目、というか、今までの経験から来る自分の判断力、というのは結構、信頼が置けるものだと思っていたりする。
 あちらが友好的な態度であるならば、こちらも酷く怯えたり警戒するような様子を見せる必要もないだろう。おれはそう思い、ゆっくりとした口調で彼女に話しかけた。


 ++++++++++++++++++++



「えっと、君が助けてくれたのかな? 俺、湖に落っこちて気を失ってた……んだよね?」
 俺が彼女に向かってそういうと、僅かに驚いたような顔をして頷いた。
「そうよ。でも、状況認識が早いわね。見たことのない場所で目覚めて、初対面の人物がいきなり近くにいたというのに、落ち着いているわ」
 うん、俺の推測は間違ってはいなかったらしい。そのまま放置とかされていたら間違いなく天に召していただろうから感謝してもしきれない。
「そっか、本当にありがとう。助かったよ」
 視線を惹きつけられていたその瞳を見つめたまま、感謝の気持ちをそのまま言葉にする。すると、彼女が僅かに視線をそらした。
「た、大した事はしてないわ」
 ……心なしか頬が赤いような。
「貴方の服、乾かしてそこに置いておいたから着て頂戴。私は部屋の外に出てるから、終わったら呼んで」
 彼女の指差した方を見ると、確かに俺が身に着けていたはずの衣服が綺麗にたたまれて置いてあった。というか俺、上半身裸だった。そりゃ、彼女も照れて視線を逸らしても無理はないってものだ。こういうのが平気な女性もいるだろうが。
 俺が服を確認したのを見て取ると、彼女はそのまま部屋から出て行った。
 俺は彼女が出て行ったドアを、少しの間放心して見ていたが、
「……って、寒い寒い!」
 自分の置かれた状況を思い出し、衣服を身にまとっていった。

 まぁ、つまり、俺はさっきの彼女に服を脱がされてしまったわけかなぁ、なんて、埒もない事を考えながら。





 ===================

 というわけで幻想入りです。

 幻想入りが何か分からないという方は、ここに来ておられないとは思いますが、詳細などは『幻想入りシリーズまとめ』さんとかをご覧ください。

 何でこれを書き始めたかというと、当然のように他の方の幻想入りを見てると何となくやりたくなってしまったという、とてもとてもありがちな話だったりします。

 で、何でこれをこんな形で公開しているか、なんですが。本来幻想入りはニコニコ動画で上げられるものではあるのですが、まぁ、私の場合、絶対最後までいくまえにエターナるな、と思いまして。

「じゃ、テキスト先に全部完成させておけば途中で止まるなんてことなくね? 俺天才じゃね?」

 という思考回路にてまずはテキストを起し始めたのでした。だがしかし、人生そんなに甘くない。テキスト完成すらやっぱり危ない事に気づいた私は、とりあえず資源を有効利用するべく、こういう形でテキストのみ公開してみようか、という感じになったのでした。

 まぁ、後数年たって完成するかなーというレベルなので。遅筆はどうしようもないね。

 そんなわけで、第1話です。短いですが。とりあえず、この先も気になる方はお付き合いください。どれだけの人が読むのか謎ですが。



 ……あ、あと何か良い題名を募集中です。適当に拍手のコメントにでも書いていただければ採用されるかもしれません。








back top next


inserted by FC2 system